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支配権

2024年11月26日
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Archetype Entertainment

トラベラーは誰しも、故郷に帰る時、エクソダスに初めて出発した時と同じくらいの不安と恐怖を覚える。時空の失われた空間で過ごしている間も、世界は自分なしで動いている。その事実に静かな痛みを抱えている。我々トラベラーにとっての数週間、数年は、残された者たちにとっての数十年かもしれない。人生は変わり、記憶は薄れ、絆は切れていく。我々は、かつて故郷と呼んでいた場所、そこに残された人々たちから、切り離されていき、漂流を続ける。

しかし、故郷は変わり続ける。我々が耐え続けてきた代償を理解できる人などいるのだろうか?故郷を長く離れたことで、愛する人々の目には疑心、恐怖、不信感が浮かんでいる。しかし、いくら彼らを強く抱きしめようと、感謝をして優しく振る舞おうと、我々の思いは再び星空へと向かう。今までとこれからの戦い、そして、訪れぬかもしれない「明日」という儚い約束へと向かうのだ。

再び故郷から遠く離れることになる。だからこそ、帰郷はいつだって… 貴重な時間だ。



「銅像はやり過ぎだ」ジョナは言った。

「まあ、確かに」アイリスは相槌を打つ。「久しぶりの里帰りで、ドッキング・フィールドの横に自分の銅像が立ってたら、確かに驚くわよね」

「仕方ないわ。10メートルもあるしね」

「英雄のような存在が必要とされていたの」アイリスは港の建物の人気のない場所に身を隠した。人々は凝視し、指をさしていた。彼があの巨大な銅像と同じ顔をしていたからだ。あの厳格で、決意に満ち溢れた、気高い銅像の顔と。ジョナは、自分とは大違いだと感じ、後ろめたい気分になった。しかし、人々は息を呑み、彼を凝視していた。ジョナの前にひざまずく老人。薄汚れたコートのすそに触れようとする女性もいた。

アイリスがジョナを港のラウンジのブースに案内すると、制服を着た数人の男たちが2人のプライバシーを確保してくれた。建物の内装も、人々の格好も、ジョナが去ったときより洗練されている。製造業が盛んになり、豊かさが確実に向上している。それに、誰もがその恩恵を受けているようだ。港のスタッフは皆、とても健康で幸せそうに見えた。飢餓に瀕し、労働にしがみついているのではなく、人々は仕事を楽しんでいた。ジョナが離れた時は荒れ放題で、一族が富をため込んで世間に背を向けるのではないかと心配になるほどであった。誰が管理者を任されたにせよ、インフラや生活の質の向上に取り組んだことは明らかだった。

「ここのスタッフはみんなトカゲのバッジをつけているようだけど。そこら中にポスターも貼ってある」

「私たちが港を引き継いだのよ」アイリスは、飲み物を乗せたトレイを背に乗せて、のそのそと歩いてきた犬に笑顔を見せた。「ありがとう、マスリ。手短に言えば、ここは悪徳カルテルに掌握されていた… 20年前までね。外の星系に海賊もいた。欲深い奴らで、海運業が壊滅状態。そこで、私たちが介入した」

「でもなぜ我々が?」ジョナは尋ねた。「いただろう… ほら… シカトレス・コーポレーション。ヴァンセルの一味だよ。俺が離れた時、ここは彼らが掌握していた」

アイリスは呆れた顔をした。「あの人たち?さっき話した海賊や極悪カルテルよ」

「まさか?」

彼女は肩をすくめた。「トップが変わって、目先の利益の追及に走った。よくあることよ」

ジョナはヴァンセル氏のことを思い浮かべた。必ずしも善人とは言えないが、秩序の価値を知る男だ。しかし、どうやら彼の後継者は違ったようだ。

「どんどん悪化していった」アイリスは続けた。「まるで戦争だった。こちらと支援者たち、そして、シカトレスとその山賊たちとの戦争。ひどい状況だったと聞いているわ。そこでマテウスおじさんは、英雄像が必要だと考えた。そして、あなたの巨大な銅像が誕生した。希望を持ち帰る人。未来への約束。そして、あなたはそれを成し遂げた。あなたの貨物目録を見たの。あの目録の半分でも本当なら、製造と気象制御衛星の分野で飛躍的な進歩を遂げることができるわ。どうしたの?」

「今、気付いた。マテウスおじさん… マッティ少年だ。俺がここを去った時、彼は君の半分ほどの年齢だった。父親の古い宇宙ヘルメットをかぶって走り回っていたよ。彼はまだここに?」

彼女は肩をすくめた。「ここが落ち着いた後、出て行ったわ。いとこのエリーシャにすべて託してね」

ジョナは、彼がいつも「宇宙旅行に行きたい」と言っていたことを思い出し、ほろ苦い気持ちになった。ジョナの思い浮かべる彼は子供のままだ。しかし、アイリスの思い浮かべる彼は、夢を掴む最後のチャンスに賭ける中年男性だ。そして、マッティは今どこにいるのだろうか。いつか再び出会うことはあるのだろうか。それとも、いつかどちらかが故郷に帰ってこなくなるまで、寿命を終えるまで、すれ違い続けてしまうのだろうか。



「近年の悩みの種は?」 ジョナはアイリスに尋ねた。しかし、悩みの種という表現は、もう使われていないらしく、言葉の意味を彼女に説明する必要があった。

「星系内に新たにCelestialが出現したの。今のところは行儀よくしてるけど、フォース・シスターのビッグムーンの遺跡の一つを再覚醒させているわ。そのうち、私たちが彼らのものを奪ったことに気付いて、問題が起きるかもしれないけど、こちらの惑星防衛隊もかなり手強いわ。今は様子見するしかないわね。夜側の大陸にある植民地の間では、分離独立運動が活発化してる。ヴィシュニおばさんが今交渉中だけど、彼らの要求通りに独立の方向で進みそう。今はまだ理論上の話だけど、こちらが独立を引き止めようとすれば、一世代後には戦争が起きるでしょうね。ここで独立させれば、いつか貿易相手になれるかもしれないし、いつかまた同盟を組めるかもしれない。私たちには常に待つ余裕がある。アウェイクンから権利を剥奪しようとする動きが高まろうとしてるけど、それを推し進めているのは基本的に3人の実業家よ。最悪の事態になれば、今すぐにでも腕の立つ殺し屋を送り込むことができる」

ジョナは考えた。「それが今のここでのやり方なんだね?」

「他に選択肢がないからよ。彼らが支持者たちに口を開くたびに、犬や豚やイルカが何十匹も狩り出されて叩きのめされる。そのための武力行使よ、ジョナおじさん。全容を理解して、理事会に意見したいのなら、あなたの一声ですぐに実現するわ。ここに留まるつもりならね」

「留まる?」ジョナは自問した。帰郷前は留まることを確信していた。しかし、余りにも多くのことが変わっていた。この故郷、大きな家族のために、今自分ができる最善の行いは、貨物を降ろし、どこかの遠い星の呼び掛けに応えることかもしれない。どこかには必ず居場所があるはずだ。そして、無論、次に彼が帰ってきた時、故郷はさらに多くの変化を遂げていることだろう。この若きアイリスは老女となり、はたまた死を迎え、自己の発見の旅に出発していく。そのころ、ジョナはどこにいるだろう?何のために作られたかを人々が忘れた去った後も、永遠に銅像として祀られた男であることに変わりはない。

しかし、そんな呪いを彼は背負わずに済むようだ。家業を引き継ぐ目的は、トラベラーが決して忘れ去られることのないようにすることだ。帰還者を待ち、不在中の変化を説明し、彼らを再び社会復帰させる。

少しざわめきが聞こえると、スタッフのそばを通ってブースに向かってくる足音が聞こえた。不規則な足取り。サーボモーターの音。人口の脚だ。ジョナは顔を上げ、目を見開いた。

「エロイーザ?」

彼女は年を取っていた。以前は何歳か年下だったが、今では自分よりも年をとっている。ただし、少し年上程度だ。彼女はは銀色の歯を光らせて笑った。

「ジョナ・レッドクロウ。元気そうじゃない!すごい!もう6年よ。まったく変わってないじゃない」

彼にとっては2年だった。そして、この世界にとっては、この重力下と大気中で、最後に2人が会ってから、30年が経っていた。ジョナがギュッと彼女を抱きしめると、冒険が彼女に与えた筋肉の重みを感じた。

「その脚は?」ジョナは尋ねた。

「ハンバラのゴーストに切りつけられたの」彼女は答えた。「でも、エンジニアがソケットにぴったり合うようにメックスーツを改造してくれたの。だから、とても動きやすいわ。しばらくいるの?」2人がそうであったように、彼女と話していると客観的な時間から切り離されていくような気分に陥る。

「俺は…」 突然、足元にしっかりとした地面があることが、とても心地よく感じられた。間接的とはいえ、自分のことを認識してくれる世界。「しばらくの間。もし残るなら。そろそろ、家業を手伝おうと思う」だがそれは永遠には続かない。それを彼は知っていた。星が再び呼び掛ける日がやってくる。しかし、時にはゆっくり時間を過ごし、相対性理論に追いついてもらうのもいいだろう。

「よかった」彼女は再び輝くような笑顔を見せた。「案内は私に任せて」

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