すべての方舟船が同時にケンタウリに到着したわけじゃないんだ。それに、到着したすべての船が同じぐらい順調に入植を始められたわけでもない。最初に到着した人たちは今ではCelestialと呼ばれる存在へと進化したけれど、新参者に対してあまり優しくない一面も持ち合わせていた。
スペアパーツ
「アロケータが融解してる」とJedryllが報告する。
「だからそう言っただろ」と彼女の首に吊り下げられた無線機からNabil7の声が聞こえてくる。彼は今、カメラドローンを操縦し、下の3Dプリンター室に繋がっている次のユニットまで移動させている。それか生命維持装置のどちらかだ。何かを停止させる際は入念に確認すべきだろう。
「EXODUS」のプロローグ
物語は続く
離れるということ章
怪物のような姿に変貌した恐るべきCelestial、マラ・ヤマは、人類がこれまでの生存闘争で直面してきた数々の脅威とはわけが違う。マラ・ヤマは恐怖を喰らい、残虐行為に愉悦し、獲物の苦悶に歓喜する。奴らはただの狩人ではない。獲物が味わう心理的苦しみを糧とする、嗜虐心に満ちた捕食者なのだ。
エヴァンが受信器の調整に取りかかった瞬間、電源が落ちた。ハンマークロスの長距離通信装置が劣化していたために、時間のかかる作業だったというのに。しばしのあいだ闇の中に座って、エヴァンは耳を澄ませた。換気装置のぶんぶんいう音はまだ聞こえてきていた。停電はしても、空気まではなくなっていなかった。
方舟船TamerlaineのエンジニアであるTorranceは、物資を盗み、ブラックマーケットで売りさばいていた。そこに意外な人物が調査に現れる。
優秀なエンジニアであるEdithは、不可能としか思えない工期に間に合わせるべく猛烈に働く一方で、まだ成人していない娘との絆を手遅れになる前に取り戻そうと焦っていた。
Abandoned Brideの主任技術者として働くKendryll。方舟船のシステムを稼働させ続けるためのスペアパーツを見つけなければならず、彼女は創意工夫を強いられる。
Fortunate Sonの出資者である富豪のJurgen Barrendownは、方舟船の打ち上げ前夜に裕福な友人たちを招いてパーティーを開く… しかし、誰もが祝福しているとは限らない。